「NHK辞めてお笑いやります」

 元NHK札幌放送局放送部番組制作ディレクターで、
マチュア漫才コンビさんだあず」として
漫才バトル「M―1グランプリ2005」で準決勝まで進んだ山田和史さん(27)が
NHKを退職し、お笑い芸人を目指すことが13日、分かった。
上司から「NHKか漫才か」と二者択一を迫られ、迷わずに辞表を提出。
在職中は笑えなかった古巣の不祥事も、今後はお笑いのネタにできるかも?


 安定したNHK局員か、一寸先も分からないお笑い芸人か。
山田さんは「二択の時点で、自分の心に、局に残る選択肢はありませんでした」と、
結論を出すのに時間はかからなかった。


 立命館大学在学中からお笑い芸人を志し、
NHK入局後も、現在朝日放送でディレクターを務める大学の同級生(27)と
コンビを組んで、漫才バトル「M―1グランプリ」に第1回大会から出場し続けた。


 2人とも現役のテレビ局ディレクターであることを生かし、
“受信料”や“ノッポさん”などNHKらしいキーワードも織り込んだネタで
笑いをとってきた。


 03、04年は並み居るプロを向こうに、3回戦まで進出。
今年は3378組から67組に残り、準決勝に初進出した。


 しかし、皮肉なことに快進撃が思わぬ展開を生み出した。
準決勝になると各メディアの注目度も高まり、
NHKとしても趣味の範囲と黙認はできなくなってくる。


 山田さんには「漫才という方法で、少しでもNHKを身近に思ってもらえれば」との
思いがあったが、局はそうはとらえてくれなかった。


 上層部からは「NHK職員として準決勝に出ることは許されない。
もし出るなら、処分の対象になる」とくぎを刺されたが、
「それならば…」と準決勝出場をとった。


 準決勝進出を局に報告したのが11月27日。
退職が準決勝1日前の12月9日。
わずか2週間ほどでNHKを飛び出す形となった。


 現段階で、唯一決まっている芸人としての予定が25日の「M―1」決勝への敗者復活戦。
見事敗者復活を勝ち上がり、
決勝に出場すれば全国ネットのゴールデンタイムでネタを披露することになり、
一気に全国区になれる。
吉本興業など大手芸能プロがスカウトに乗り出す可能性も出てくるわけで
「そこを目指して、頑張りたい」。


 これまで、番組制作の現場で芸の世界の厳しさを目の当たりにしてきただけに
「いかに難しいかは分かっているつもり。それでもやってみたい」と言葉に力を込める。


 夢を追い求めた先にはどんな世界があるのか。
これからの演出は、自らの芸に委ねられる。[デイリースポーツ]