「飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ」

フジテレビ 21:00〜

 今から26年前、
がんのため32歳の若さでこの世を去った医師・井村和清さん。
その半生をドラマ化した「飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ」を、
フジテレビ系では10月10日(後9・0)に放送。
主人公・清治を稲垣吾郎、その妻・美和を紺野まひるが演じる。
文化庁芸術祭参加作品。


 原作は、闘病生活を続けた晩年の井村さんが、
当時2歳だった娘の飛鳥さんと、
妻・倫子(みちこ)さんのおなかの中にいた清子さんに当てた手記。
1980年に単行本化されて以来、
その温かいメッセージは100万人を超える人々に読み継がれてきた。


 これまで「娘たちに父親像を押し付けたくなかった」と
夫の話をほとんどしなかった倫子さんは、
ドラマ化の打診に当初、戸惑ったという。
しかし、「このドラマで父親の人間性を知り、
娘たちにはより幸せになってほしい」と思い直して受諾。
ドラマには、倫子さんに追加取材した、
原作にはないエピソードも盛り込まれている。


 制作には4ヵ月という連続ドラマ並みの日数をかけ、
井村さんと倫子さんが出会った沖縄でのロケも敢行。
Dr.コトー診療所」を手掛けた中江功監督が、
登場人物の心の機微を美しい映像とともに演出し、
収録予定表に終了時間を書き込まないほど、
スタッフ、キャスト共に撮影に没頭した。


 渾身(こんしん)の演技に自信を見せる稲垣は
「この作品は僕にとって大きな意味のあるものになった。
役者として自分の中で改革が起きたような気がする。
1つ1つのカットを額縁に入れて飾りたいくらい」と充実の表情。
実際にその演技を見た倫子さんは、涙が止まらなかったそうだ。


 同時に稲垣は、作品を通して人間としての成長も実感したという。
「五体満足に暮らしていけるありがたみを、つい人は忘れてしまう。
この役を演じて、それを心から感じることができた。
好きな仕事をやれる日々に感謝したい」と語っている。[TVガイド]