この人物のオモテとウラ 劇団ひとり

●文芸部門でトップ独走

 絶好調のお笑い芸人、劇団ひとり(29)の処女小説
陰日向に咲く」(幻冬舎刊)が売れに売れている。
先月、トーハン調べの文芸部門で売れ行き1位に躍り出て以来、
トップの座をキープ。
1月の刊行からわずか2カ月半で10刷、発行部数が22万に達している。

 物語は5人の主人公から構成されている連作短編集だ。
ホームレスに憧れて仕事を捨ててしまうサラリーマン、
秋葉系アイドルにはまってしまうおたく男、
男にもてあそばれる自称カメラマンの20歳の女フリーター、
ギャンブルで借金まみれの中年駅員、
浅草のストリップ劇場でくすぶる売れない漫才コンビ……。

「題名にあるように、そんな人たちを
陰日向に咲く人々”として温かく描いています。
5人の物語がうまくつながり、ユーモラスでいて、なお哀愁の漂う読後感がある。
とてもお笑い芸人が初めて書いた小説とは思えません」(文芸評論家)

 一部には「直木賞の有力候補」なんて声もあるが、
実は、出版社から持ちかけられた当初の企画は、
よくあるお笑い芸人の“ネタ本”だったというから、分からないものだ。

●名門・県立船橋高校出身

「本人は小説はおろか、ろくに読書もしたことがない。
ところが、企画を持ちかけられ、書いているうちにエッセー風になり、
それならいっそのこと小説にしてみたらどうか、となったらしい。
そうやって1年かけて何とかまとめたのが、この本だというのです」
(大手出版社の編集者)

 本名・川島省吾。経歴も少々変わっている。
1977年2月、
JALパイロットの父親と元スチュワーデスの母親の二男として生まれた。

 兄、妹に挟まれ、幼い頃は父親の仕事の関係で米アンカレジで育ったという。

「アラスカの大自然に囲まれ、
鹿や熊を間近に見ながら暮らしていたといいます。
ただし米国育ちといっても、
英語はすっかり忘れてしまったと本人は笑っています」(芸能ライター)

 小学生の時に帰国。
千葉市幕張本郷中学から県立京葉工業高校機械科に入学したが、
1年で中退し、県立船橋高校定時制に入り直している。

●「ドラえもんでは1人5役」

 お笑いの道に入ったきっかけは、その定時制高校時代だ。

 日テレの「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の
“お笑い甲子園”に出場していきなり準優勝。

 以後、ビートたけしに憧れて「太田プロダクション」入り。
スープレックス」というお笑いコンビを結成したが、6年間鳴かず飛ばず
あげく00年5月に相方に逃げられたという。
で、仕方なくピン芸人として活動を始めたところ、
例の“泣きの芸”で大ブレーク。
いまや人気アニメ「ドラえもん」の劇場版で1人5役の声優を務めるなど、
引っ張りダコ。その上“文壇デビュー”とは、うまくいき過ぎでは?
ゲンダイネット

劇団ひとり 陰日向に咲く